再読、としていますが、何度読み返した事かわかりません。
嶽本野ばらの初期の著作のエッセンスが全て含まれているエッセイです。
久しぶりに読んだので感想を。
嶽本野ばら氏をご存じない方のために
嶽本野ばら氏は、ちょっと前に映画化された「下妻物語」の原作小説の作者です。
男性ですが、乙女。
めんどうな説明はWikipediaにお譲りしますが、昭和の少女文化に造詣が深く、中原淳一、高橋真琴、吉屋信子などの世界をちょっと極端に大胆に自身の作品(主に小説)に落とし込んで表現し続けている作家です。
そして、「乙女のカリスマ」とも称されています。
「それいぬ 正しい乙女になるために」はそんな方が書いたエッセイです。
あら、わたくしまで口調が乙女に。
「それいぬ 正しい乙女になるために」について
この本はエッセイ集です。
2ページ程度の”乙女こうあるべし”という文章が纏められた本。
乙女は気高く、自分がいつも一番で意地悪。美意識過剰。
文章や使われているワードがちょっと古臭くて小難しいわ、と思うところもあるかもしれませんが、小難しいのに読破してしまったあなたはもう乙女。
これでどんな世界観かイメージ出来ると思います。
わたしが気に入っているお話は
孤高の乙女という生き方を推奨する
「お友達なんていらないっ」
ファン心理をモチーフに、乙女に磨きをかけることを勧めている
「私の彼はミスター・スポック」
そして、近年あまり流行らなくなってしまった「根性」について、実際の意味はこうだよ?と語る
「努力と根性」
などです。
「お友達なんていらないっ」では、一人ぼっちでお悩みの乙女をこのように勇気づけます。
乙女とは「絶対的存在」です。
「絶対」とは他とは比較することの出来ない「唯一性」のものなのですから、仲間なんていらないのです。
(「お友達なんていらないっ」より)
さらに、
「心開けば友達は出来る」なんていいますが、他人に心を開くなんて勿体なくて出来ません。
(「お友達なんていらないっ」より)
他人に自分を見せることについて「勿体なくて出来ません」などというところに共感できちゃうのは変態と捉えてよろしいかと思いますが、ある意味大変奥ゆかしくもあり、また非常にずーずーしくもある感じを肯定してくれるところがたまりません。
乙女のバイブルだ
わたしがこの本を手に取ったのは完全に大人になってから。
世の中、なんだかだーれも味方いないな、なんて思って心がやさぐれていた時でした。
ハードボイルドな乙女(?)として生きる勇気をもらった本です。
出来れば中学生の時に出会いたかったです。
先ほど、テレビのニュース番組で「ネット上のいじめ」で学校へ行けなくなった女の子の話をみました。
このような乙女たちにぜひおすすめしたい書でございます。
よく「友だちに悪口をネットに書かれた」とか、「友だちにハブられた」とか聞きますが、そんなの”友だち”ではありませんのよ。
小説「ミシン」と一緒に手に取れば、心はきっとヴィヴィアンウェストウッドになりましょう。